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では、ダラダラ始めたいと思います。まず、お互いの作品の印象から伺いたいのですが。 |
| 渡辺 |
「僕ですね、TVをまったく見ないんで、本広監督のTVの作品はまったく見てないんですよ。で、映画だけ見せて頂きまして。『踊る大捜査線 THE MOVIE』(以下『大捜査線』)を初めて見たんですけど、周りでやっぱり評判になっていた映画で、しかもTVシリーズから映画化されたもの、ということで、うち(ビバップ)も同じだしちょうどいいや、と思って。どういうものか見よう、と。で、TVを全然知らなくても楽しめた。それで、TVで明かされなかった謎とか、そういうのを映画で明かしたり、TVの決着を映画でつけるのはやめようと。そういう意味でも参考になった作品です」 |
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本広さんのほうは? |
| 本広 |
「僕はDVD全部持ってます」 |
| 渡辺 |
「すいません。恐縮です」 |
| 本広 |
「1本買ってみて、『おもしろいなぁ』と思って、それで……あの、音楽の使い方が抜群に良くて感動して。最初は監督よりも作曲家、菅野さんに興味が行って。『女性なんだ!』と思って感動して、そうしたら『大捜査線』の曲を作ってくれていた松本さんという作曲家と菅野さんは、大学の先輩後輩にあたる人だということも分かって、松本さんとそういう話もして。それでも……監督が見えないんですよ」 |
| −− |
? |
| 本広 |
「ネットで検索しても写真がどこにもないし。それで余計、ビバップのイメージがこう、独特の世界になって。誰が作ったんだろう? とか、そういうのが見えにくくて、ああうまいつくりかたされてるなぁと思って……周りからは色んな話聞くんですよ。『渡辺さんは絵コンテを描けない人だ』とか」 |
| 一同 |
「ええっ!?」 |
| 本広 |
「そういう噂を聞いたことあるんですけど、本当なんですか?」 |
| 渡辺 |
「……(苦笑)……」 |
| 本広 |
「『絵コンテ描けない監督さんもいるから、本広君もアニメやってみなよ』とか言われたことがあるんですけど……(笑)」 |
| 渡辺 |
「……あのですね、当然絵コンテがないとアニメはつくれませんから、絵コンテは描けます。ただアニメーターが描くようなちゃんとした絵は描けない、ということですね」 |
| 本広 |
「そうじゃないとおかしいですよねぇ? 前、ニュータイプ誌の対談で、真剣に庵野秀明監督に『アニメのクリエイターになりたいんですけど』って相談したんですよ。『でも僕、パースも描けないんですけど』って。そうしたら、一喝されましたね。『絵が描けないと無理だよ』って(笑)。『だって他人に伝わらないもん』『そうですよねぇ〜』って」 |
| 渡辺 |
「でも、実写でも絵コンテ描く人いるでしょう?」 |
| 本広 |
「実写は描けない人がほとんどだと思いますけど……岩井俊二さんとか矢口(史靖)君とかうまいですよね。僕の場合は『字コンテ』と言ってですね、字だけで『ズーム』『アップ』とか書いてあって、あとはカメラマン撮ってねって(笑)」 |
| 渡辺 |
「確かにあんまり凄い絵を描かれても困るでしょうしね」 |
| 本広 |
「黒沢明さんの絵コンテとか、凄いですもんね。アートで。でも実写になったらそれは素晴らしい芸術として……こないだ宮崎駿さんの絵コンテ集が出るっていうんで取材されて、それで初めて絵コンテ見たんですけど……マンガですね。あの流動感がそのまんま絵コンテになっていて。『サッサッと描いてこの程度ですよ』って言われて、『僕はもうアニメは出来ない……』って(笑)。で、渡辺監督はどうなんだろう?って。それが一番確認したかったんです」 |
| 渡辺 |
「宮崎さんの絵コンテは……あんなの描いてるのは日本で3人ぐらいしかいません(笑)。だいたいTVシリーズの絵コンテなんて、けっこうラフなものですから。それを見て絵描きが意図を拾っていって、絵を作っていく。それがアオリか俯瞰か全然分からないというぐらいの絵だと、『どうなのよ?』とは言われてしまいますけど。まあでも、宮崎さんみたいな絵コンテは描けませんよ、そりゃあ」 |
| 本広 |
「そうですか……『みんなこれくらいの絵を描くんだろうな』って思ってしまうんですよ、素人からすると」 |
| 渡辺 |
「要は他人に伝わりさえすればいいんですよ」 |
| 本広 |
「いやあ、ホッとしました。これから勉強して、パースぐらいは描けるようにします(笑)。もう本当、ダメなんですよ。再生能力がまるでなくて、見ているものを描いても全然違うものになっちゃうんです」 |
| 渡辺 |
「でも、それはオリジナリティじゃないですか? まんま同じだと、それはマネになっちゃうから」 |
| −− |
渡辺監督はもともと実写の道に入りたかったんですよね? |
| 渡辺 |
「そうではなくて、映画がやれればどちらでもよかったんです。もともと実写もアニメも区別なく見てたんですけど、学校出て就職するときに、ちょうどその年に公開してたのが『風の谷のナウシカ』とか『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』('84年公開。監督・押井守)で、なんかアニメは好き勝手やってておもしろそうだなぁと思って」 |
| 本広 |
「はいはいはい」 |
| 渡辺 |
「一方実写を見ると、そのとき出てきた新人監督って、『助監督15年やってました!』みたいな方たちばかりで。それならアニメのほうが早く監督になれそうだなっていう(笑)」 |
| 本広 |
「僕はどっちかというとアニメを見ていることが多くて。で、僕もちょうど『ビューティフル・ドリーマー』を見たんですけど、同時上映で大森一樹監督の『すかんぴんウォーク』(実写)を見て、『こんなことやっていいんだ!』って感動したんですよ。それで実写に傾いたんです」 |
| 渡辺 |
「じゃあ、ひょっとしたら同じぐらいの歳なのかな?」 |
| 本広 |
「僕は'65年生まれですね」 |
| 渡辺 |
「僕も'65年。じゃあ同じ年に同じようなものを見て、それでどっちに行くかで別れたのかな」 |
| 本広 |
「あの2本立てが僕にとって決定打だったんですね(笑)」 |
| 渡辺 |
「実写はあまり見なかったんですか?」 |
| 本広 |
「実写の映画……そう言われるとほとんど見てないかもしれない。アニメばっかり(笑)」 |
| 渡辺 |
「逆に僕はアニメをたいして見てない(笑)」 |
| 本広 |
「だからなんですね、『ビバップ』がいいのは。どこか、僕の中のアニメーションの法則と違うんですよ。何が違うんだろうなってずっと考えてたんですけど」 |
| 渡辺 |
「アニメよりも'70年代の実写映画とかの影響のほうがはるかに強いかもしれない。だから、蓄積は逆なんじゃないですか。それで反対のものをつくってるのがいいのかも。ところで、本広さんの映画って『マンガっぽい』ってよく言われますよね。それは意識してやってるんですか?」 |
| 本広 |
「たぶん刷り込まれてるんだと思います。『サトラレ』でも、ヘリコプターの一団が災害地に駆けつけるシーンがあるんですが、そのCGをやってくれた『ジュブナイル』の監督の山崎(貴)さんが言うには、『手前にカメラを置いてヘリが越えていくようにすれば迫力が出るし、映画っぽくなるよ』って。でも、僕はつい俯瞰で画面をつくるんですよ。『それがアニメっぽい証明だ』って山崎さんに言われて……そういえば『パトレイバー』でこんなシーンあったぞ!って(笑)。」 |
| 渡辺 |
「見ていて不思議だったんですけど、キャラクターがカリカチュアされている感じがありますよね? これはわざと誇張しているのか、それともこれが普通だと思っているのか、どうなのかなと思って」 |
| 本広 |
「ああ、最近は狙ってやってるところがありますね。でも最初はいろいろ悩んで……渋くてムードがあって、とか、そういうものをつくったほうが作家として地位が上がるというか……アーティストと呼ばれたいというのがあったんですよ」 |
| 渡辺 |
「呼ばれたいんですか?」 |